会社が大きくなったから、社長が数字を見るようになるのだろうか。
それとも、社長が数字を見る会社だから、大きくなっていくのだろうか。
鶏が先か、卵が先か。一時点を切り取った調査だけで、その因果関係を軽々しく断定することはできない。
だが今回、中小企業の経営判断に関わる経営者・会社役員539名を対象に「試算表や決算書を経営にどう使っているか」を調べたところ、見過ごせない事実が浮かび上がってきた。
本調査は、Bottino株式会社がGMOリサーチ&AI株式会社に委託して実施したものだ。
年商3,000万円未満の企業で、試算表を毎月作成している割合はわずか18.6%。一方、年商3億~5億円では80.0%、30億円以上では83.8%に達していた。
さらに、試算表・決算書を経営判断に「活用できている」と答えた割合も、年商3,000万円未満では49.7%にとどまったのに対し、10億~30億円規模では94.9%にのぼる。
売上規模によって、「数字を見る頻度」と「数字の使い方」に大きな差がある。
なぜ、規模の大きな会社の経営陣ほど数字を手元に置くのか。会社の健康診断をするつもりで、カルテを診るようにその背景を掘り下げてみたい。
会社が大きくなると「毎月数字を見る」が当たり前になるのか
まず確認したいのが、試算表を作成する頻度だ。
年商3,000万円未満では、「毎月作成している」と答えた企業は18.6%にすぎない。一方、「作成していない」が51.4%、年次決算のみが13.0%、不定期が7.3%を占める。
この規模では、試算表を作成していない企業が半数を超えており、月次で数字を確認する習慣が定着していない企業も多いことがうかがえる。
売上規模別に「毎月作成している」割合を並べると、以下のようになる。
- 年商3,000万円未満:18.6%
- 3,000万円~1億円未満:40.3%
- 1億~3億円未満:62.5%
- 3億~5億円未満:80.0%
- 5億~10億円未満:71.2%
- 10億~30億円未満:78.0%
- 30億円以上:83.8%

試算表を「毎月作成している」割合は、年商3,000万円未満では18.6%、3億~5億円未満では80.0%。調査主体:Bottino株式会社/調査実施:GMOリサーチ&AI株式会社
3億~5億円の80.0%から、5億~10億円では71.2%へ一度低下しており、売上規模と月次作成率が完全に比例しているわけではない。
それでも、年商3,000万円未満では18.6%だった月次作成率が、年商1億円以上の各階層では6割を超え、3億円以上では7~8割台で推移している。
規模の大きな企業ほど、月次で数字を把握している傾向が見て取れる。
「作る」だけで終わる会社、経営の「道具」にする会社
次に着目したいのが、「試算表・決算書を経営判断に活用できているか」という問いだ。
「十分活用できている」「ある程度活用できている」と回答した割合を合計すると、次のようになる。
- 年商3,000万円未満:49.7%
- 3,000万円~1億円未満:82.1%
- 1億~3億円未満:83.0%
- 3億~5億円未満:94.3%
- 5億~10億円未満:88.5%
- 10億~30億円未満:94.9%
- 30億円以上:91.9%

試算表・決算書を経営判断に「活用できている」割合は、年商3,000万円未満では49.7%、10億~30億円未満では94.9%。調査主体:Bottino株式会社/調査実施:GMOリサーチ&AI株式会社
このデータから見えてくるのは、「売上に比例して少しずつ活用度が上がる」というよりも、年商3,000万円未満と、それ以上の企業との間に大きな差があるという点だ。
年商3,000万円以上の各階層では活用率が8割を超え、3億円以上では9割前後となっている。
ただし、ここで忘れてはならない原則がある。
試算表を作ること自体は、経営の目的ではない。
定期健診を受けて、検査結果の数値を引き出しの奥にしまい込んでいても、健康状態は改善しない。
会社も同じだ。
試算表を眺めて、「売上はいくらだった」「利益はこれだけ残った」と確認するだけでは、過去の答え合わせで終わってしまう。
「この数字が出ているなら、現場で次に何をするか?」
具体的な行動の意思決定に直結させて初めて、数字は経営を守る道具になる。
規模が大きくなると、数字の「使い道」も広がるのか
では、各社は試算表や決算書を、具体的に何の判断に使っているのか。
全体の集計結果は、次のとおりだった。
- 売上・利益などの業績確認:73.1%
- 資金繰りの確認・予測:33.4%
- 金融機関への提出・融資の検討:24.3%
- 採用・人員配置・人件費の判断:19.9%
- 設備投資の判断:18.6%
- 値上げ・価格設定の判断:17.6%
- 商品・顧客別採算の確認:13.7%
- 特に活用していない:11.5%
- 店舗・部門別採算の確認:10.2%
- その他:0.2%

試算表・決算書の活用目的は「売上・利益などの業績確認」が73.1%で最多。「資金繰りの確認・予測」は33.4%だった。調査主体:Bottino株式会社/調査実施:GMOリサーチ&AI株式会社
過去の通信簿である「業績確認」が7割を超えるのは、自然なことだろう。
差が出るのは、その先にある「未来の意思決定」への活用である。
年商3,000万円未満の層を見ると、業績確認50.8%に対して、資金繰りの確認・予測13.6%、設備投資の判断5.1%、採用・人員配置・人件費の判断5.6%だった。
少なくとも今回の回答を見る限り、「今月どうだった?」という業績確認に比べ、「これからどうする?」という判断への活用割合は低くなっている。
一方、年商10億円以上の企業群(10億~30億円未満と30億円以上の合算、n=96)では、「資金繰りの確認・予測」への活用が55.2%と過半数を占めた。
規模の大きな企業では、過去の成績表としてだけでなく、資金繰りなど将来を見通すための意思決定にも、数字の活用範囲が広がっていることがうかがえる。
試算表の役割は、過去の答え合わせだけではない。
過去の数字から現在の状態を把握し、次の一手を考えるためのカルテでもあるのだ。
規模が大きくても陥る「数字の遅れ」という症状
では、規模の大きな会社なら、月次管理が完璧にできているのだろうか。
決してそうではない。
今回の調査で、「毎月試算表を作成し、翌月10日以内に確認できている」と答えた企業は、全回答者539名のうち23.6%にとどまった。
年商30億円以上の層に絞っても43.2%で、半数には届かなかった。
ここには、企業規模を問わず存在する「数字が出てくるスピード」という課題がある。
たとえば、7月の数字が確定するのが9月末だったとしよう。
7月に起きていた原価率の悪化や、特定顧客からの入金遅延を、経営者が知るのは約2か月後だ。その時点で異常を発見しても、対応が後手に回る可能性がある。
会社の健康診断で考えるなら、「検査結果が届くのは2か月後です」と言われているようなものだ。
実際、今回の調査対象者の26.2%が、「月次試算表をより早く作成・確認できるようにしたい」と回答している。
続いて、「将来の資金繰り予測を確認できるようにしたい」が20.2%、「数字の意味や改善点を分かりやすく説明してほしい」が17.1%だった。

毎月試算表を作成し、翌月10日以内に数字を把握できている企業は全体の23.6%。今後欲しい支援では「月次試算表の早期化」が26.2%で最多だった。調査主体:Bottino株式会社/調査実施:GMOリサーチ&AI株式会社
数字は、ただ毎月作ればよいわけではない。
経営判断に間に合うタイミングで手元に届いて初めて、会社の状態を改善するための情報になる。
社長が見るべきなのは「合計額」ではなく「変化の兆候」
経営支援の現場で企業の数字に接していると、規模の大きな企業ほど、経営者や役員が数字を見る頻度が高いと感じることがある。
ただし、これは毎日難解な財務諸表を作るべきだ、という話ではない。
経営者が本当に知りたいのは、「売上高1億2,345万円」という静止画のような合計額ではなく、複数の数字が連動して発している「変化のシグナル」だ。
- 売上の伸びに対して、会社に残す力(限界利益)の割合が落ちていないか
- 売上は立っているのに、売掛金の回収期間が延びていないか
- 倉庫の奥で、動いていない在庫が現金を圧迫していないか
- 人件費の増加に対して、現場が生み出す付加価値は増えているか
- 現預金の減少が続いていないか
これらはすべて、会社の内部で起きている異変を知らせる「検査数値」だ。
ひとつの指標の大小に一喜一憂するのではなく、複数の数字の変化から「会社の中で何が起き始めているのか」を読み取る。
症状が深刻になる前に対策を考えるためにこそ、経営者は数字を見る必要がある。
数字を見るから伸びるのか、伸びたから数字を見るのか
最初の問いに戻ろう。
試算表を見る経営者ほど、会社は伸びるのだろうか。
今回の調査データは一時点の状態を調べたものであり、「試算表を見れば必ず会社が成長する」という因果関係を証明するものではない。
会社が成長した結果、経理担当者を採用できるようになり、月次管理の体制が整った可能性もある。
一方で、会社がまだ小さい段階から、勘や通帳残高だけに頼らず、自社の数字を確認し、小さな異常に手を打ち続けてきたことが、その後の成長を支える経営基盤になった可能性もある。
今回の調査だけでは、どちらが原因で、どちらが結果なのかは分からない。
ただ、数字を定期的に確認し、その変化を次の行動につなげることの重要性は、会社の規模によって変わるものではない。
むしろ、経営資源に余裕がなく、ひとつの判断ミスが大きな影響につながりやすい小さな会社ほど、自社の「脈拍」と「血圧」を正確に把握しておく必要がある。
感覚だけで走るのではなく、自社の状態を数字で確かめる習慣をつくる。
それが、会社が次の成長段階へ進むための経営基盤の一つになる。
あなたの会社は、どの段階にあるか
最後に、自社の数字の扱い方を振り返ってみてほしい。
- 毎月、試算表を作成している
- 翌月10~15日頃までに、経営陣が数字を確認できている
- 過去の業績確認だけでなく、資金繰りや採算の判断に使っている
- 数字を見たあと、「次に現場で何を改善するか」まで決めている
4項目すべてが「YES」なら、数字を経営判断に活用するための土台は、かなり整っている。
一方で、「決算のときしか数字を見ない」「試算表は税理士から届いたときに眺めるだけ」「数字は見ているが、どこをどう直せばよいのか分からない」という状態なら、自社の数字の診かたを一度点検してみてほしい。
健康診断の価値は、重病の宣告を受けることではない。
小さな異常を早い段階で見つけ、大事に至る前に改善することにある。会社の数字も同じだ。
回答が「NO」だった項目に応じて、次のカルテもあわせてご覧いただきたい。
- 1がNOだった方 → お金のカルテ「資金繰り表とは?」
- 3がNOだった方 → お金のカルテ「売上は増えているのに、なぜお金が残らない?」
- 4がNOだった方 → 利益のカルテ「損益分岐点の計算方法」
- 値上げや価格設定に数字を活用できていない方 → 利益のカルテ「値上げしたのに、なぜ利益は増えないのか」
会社の数字を、自分で動かしてみる
数字は、見るだけでなく、「もしこうしたら?」と動かしてみると、経営判断に使いやすくなる。
たとえば、
- 5%値上げしたら、利益はいくら増えるのか
- 原価率を2%改善したら、どれくらい利益が残るのか
- 目標利益を達成するには、いくら売上が必要なのか
Bottinoの無料経営シミュレーターでは、売上・原価・固定費などを入力して、こうした経営改善策を試算できる。登録は不要だ。
自社の数字で経営改善策を試算してみる
数字に気になる症状が見つかったら、次は「かいしゃの主治医」のそれぞれのカルテで原因を詳しく診てみてほしい。
健康診断で異常を見つけ、カルテで原因を診る。
原因が分かったら、改善するための「処方箋」を考える。
それが「かいしゃの主治医」の考える、会社の数字との付き合い方だ。
調査概要
- 調査名:試算表・決算書の経営活用実態調査
- 調査主体:Bottino株式会社
- 調査実施:GMOリサーチ&AI株式会社
- 調査方法:インターネット調査
- 調査地域:全国
- 調査対象:20~69歳の男女のうち、従業員1~99名の企業における経営者・会社役員で、会社の経営判断について「最終決定を行う」または「直接関与している」と回答した方
- 有効回答数:539名
- 調査時期:2026年9月
※本調査では、対象条件に該当する回答者をスクリーニングしたうえで本調査を実施しています。 ※複数回答の設問については、回答割合の合計が100%を超える場合があります。 ※各数値は小数点以下の処理により、合計値が一致しない場合があります。 ※本調査は、企業規模と試算表・決算書の活用状況との関連を調べたものであり、因果関係を証明するものではありません。
※本調査結果の詳細は、PR TIMESの調査リリースでもご覧いただけます。